私たちの実践

TL人間学(魂の学)による「法務」の再定義によって、問題解決の仕方がまったく変わりました

私は、高校生の頃、当時問題となっていた4大公害裁判(*)を見て、「社会的弱者の方々の助けになりたい」と思い、「法務」に関心を持つようになりました。そして、検察官を経て弁護士になりました。

法律とは、社会を律し、人権を守るものです。私たちは法に従わなければならず、背いた場合は裁かれます。それが一般的な法律観です。

一方、TL人間学(魂の学)では、人間を永遠の生命、魂存在であり、魂の進化、成長をめざして転生を繰り返すものと捉えていますので、そこから見た法律とは、人間の魂の可能性を十全に開花させるためにあるものと考えます。

このTL人間学(魂の学)を基として、「法務」を「法律観」「事件観」「判断観」「解決観」「法務従事者観」「事務所観」「依頼者観」という7つの観点から再定義したものが「法務の7項目」になります。この新たな定義により、これまでの法曹界に染みついていた常識がはぎ取られ、私はこれまで感じたことのない感動を覚えました。そして、この視点を持ったことで、事件に対する見方も解決の仕方も大きく変わってゆきました。

以前の私にとって、事件は処理するものでした。法的に解決すればそれで終わり、それ以上の人間関係のもつれや感情面の話は人生相談であり、私たちの仕事ではないと考えていました。しかし、TL人間学(魂の学)を学んでからは、3つの「ち」(血・地・知)という人生へのまなざしや、「ウイズダム」という問題解決のメソッドにより、事件だけでなく、相手の心にまで目を向け、その方の悩みや苦しみも含め同伴し、その方の人生が癒やされる解決まで結ぶことができるようになってゆきました。

たとえば、ある依頼者Aさんの傷害事件を担当したときのことです。Aさんは、あるスポーツクラブの指導をしていましたが、部下であるBさんのクラブ会員に対する言動が礼節を失していたために、指導のつもりで注意し、軽く叩いただけでしたが、その件が刑事事件として告発されたのです。Aさんは当初、「何でこんな目に遭うのかわからない」という気持ちでした。注意としては順当なことをしただけなのに、警察に調書を取られ、最悪の場合はクラブから解雇されるというところまでひっ迫しました。

私は、なぜこの事件が起こったのかを本人と一緒に尋ねてゆきました。すると、Aさんは、自らの正義感の奥に「自分を馬鹿にされた」という怒りが瞬間的に湧いていたことに気づかれたのです。その恨みや怒りがBさんに伝わり、事件を複雑化させる原因になっていたことを発見されたAさんは、さらに人生を振り返り、過去にもこの「馬鹿にされた」という想いを止められず、人間関係を壊す失敗を重ねていたことを発見され、この事態をしっかりと引き受ける気持ちになってゆかれました。すると、事態は光転し、罰金のみで決着をみたのです。その結果、Aさんも清々しいお気持ちで次なる人生の道へと踏み出してゆかれました。

かつての私は、たとえ仕事が順風満帆でも、どこか根なし草のような不充足感があり、限界感を抱えていました。けれども今、TL人間学(魂の学)による新しい法務観を持って、依頼者が新しく人生を開いてゆかれるお手伝いができることが、とても大きな歓びになっています。

(*)四大公害訴訟とは、水俣病、新潟水俣病、四日市公害訴訟、イタイイタイ病の四つの公害裁判を指す。

1984年開業。以来毎年多数の相談・依頼を受けている。TL人間学(魂の学)のまなざしによる問題解決の手法は、欠くことのできないほど、村山さんの血肉となっている

判例に目を通す村山さん。書棚には多くの資料が保管されている。事件を検討する際は、過去の裁判例や学説の調査が欠かせない

専門分野のセミナーでは、先生がつくられたオリジナルの教材シートで、自分がそのとき抱えている案件について取り組む